「・・・あっつぅ」

学園を出てから半日ほど経って、今は昼時。
容赦ない夏の日差しが、じりじりと照りつけてくる。
笠があるとはいえ、かなりきつい。

「この辺りで少し休もうかしら」

近くの木陰に入り、腰腰掛けて水分補給をする。
時折吹く風が何とも気持ちいい。
そして、いい加減我慢できなくなったので、溜息を一つ吐いて話し掛けた。

「いつまで私の後をつけるおつもりですか、七松先輩」
「なんだ、やはり気付いていたのか」

上から七松先輩が降ってきた。

「ええ、まあ、かなり前から。七松先輩のご実家はこちらではなかったと記憶していますが」
「ああ、そうだな」
「でしたら」
「お前を連れ戻しに来たんだ」
「・・・は?」

私が先輩の言っていることを理解できずに呆けている間に、先輩は私の腕を掴んで立ち上がらせ、そのままずんずんと歩き出した。

「ちょ、な、七松先輩!?」
「なんだ?」
「せ、説明・・・説明を求めます!!」

だんだんと歩幅を広げ、その内走り出しかねない先輩に声を掛ける。

「一体何なんですか?連れ戻すってなんですか?」
「ん、実はだな・・・」

そう言って、説明をし始める先輩だったが、歩みは止めてもらえなかった。
くそ、まだほんの少ししか休憩してないのに。

「夏休み明けに学園長先生が陸上競技大会を開く、という情報を手に入れたのだ」
「・・・陸上競技、ですか」
「委員会の花形である体育委員会の委員長としては、体育委員は陸上競技大会で優勝を目指さなければならないと思う」
「・・・・・・はあ」
「そこで!!体育委員会は陸上競技大会に向けて、夏休み中強化合宿を行うことにした!!」
「・・・・・・」

なんということだ。
この言い様だと、その強化合宿なるものを夏休み全て使って行う、という風に聞こえる。
というか、そうとしか聞こえない。

「その、合宿は・・・これから、するのですか」
「そうだ」
「・・・夏休み明けまで?」
「もちろん」
「あの、いくらなんでも少し長すぎるかと」
「この位ないと優勝を目指せないぞ」
「しかし、夏休みの課題はそれなりの時間を掛けて、準備する必要があって」
「細かいことは気にするな!!」

駄目だ、聞く耳持たぬとはまさにこういうことを言うんだろう。
滝夜叉丸と三之助と四郎兵衛と金吾を拾いに行くぞ、と言う先輩は歩く速度をどんどんと速め、とうとう走り出してしまった。
腕を掴まれたままなので私もつられて走るが、やはり小袖だと制服より走りづらく速く走れない。
いつもより遅い私に気付いたのか、先輩が止まりこちらを振り返った。

「どうした、遅いぞ」
「すみません、・・・この格好はどうにも走りづらくて」
「そうか、なら仕方ない」
「え?」

仕方ないと言った先輩は、あっという間に軽々と私を肩に担いで走り出した。

「ちょ、ま・・・お、降ろしてください、七松先輩!!」
「ん?この方が速く移動が出来るからいいじゃないか」
「いや、そうではなくて」
「まあ、細かいことは気にするな」

いけいけどんどーん!!、と言って先輩はまたスピードを上げる。
流れていく周りの景色を眺めながら、溜息を一つ吐いた。

今年の夏休みは、このいけどん委員長のお守りと強化合宿という名の自主トレ、そして後輩たちの宿題のフォローで終わってしまうようだ。










2012.5.14 浹
2012.7.29 加筆修正





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