【あの人は(これでも)僕らの委員長。】


問、貴方が委員長代理をしているのは何故ですか?

竹谷八左ヱ門の場合。
答、先輩が有り得ないほど自分から人と関わるのが嫌いだから。

「・・・先輩」
「今日は特に元気だね。何か良いことでもあったのかな?」
「先輩」
「相変わらず良い毛並してるね」
「先輩!!」
「・・・・・・何?竹谷八左ヱ門」

俺が大声で先輩を呼ぶと、優しい手つきで山犬を撫でていた時とは打って変わり、随分と淡々とした調子で反応してもらえた。
山犬はというと先輩に撫でられていて気持ちよさそうにしている。

「・・・委員長会議、終わりました」
「そう」
「会議位ちゃんと出てくださいよ」
「なんで?」
「な、なんでって」
「君で事足りてるのだから、それで良いだろう」

この様子では、先輩が会議に出てくれるまでの道はまだまだ遥か先のようだ。
はぁ、と諦めの溜息を一つ吐いた。

「さて、そろそろ他の子たちの様子も見に行かないとね」

先輩が立ち上がると、山犬は引き留めるように身を摺り寄せた。
その様子に困ったように、でも嬉しそうに先輩は笑う。
そんな顔、人相手には絶対にしないのに。

「君を連れて行くと他の子たちは怯えちゃうからね。大人しく此処で待っててね」

先輩が撫でながら言うと、山犬は切なそうな鳴き声を出して先輩から身を離した。

「良い子だね。また戻ってくるからね。・・・竹谷八左ヱ門」
「!!は、はい」
「今、三年生がジュンコ達の世話、一年生が二人菜園の手入れ、他二人は小屋の掃除をしてる。君は菜園の方だ」
「・・・わかりました」

先輩はじゃあね、と山犬に手を振ると馬屋の方へと歩いて行った。
離れていく先輩に山犬が名残惜しそうに、おおんと鳴いた。
昔よりは話せるようになったが、まだまだ距離を縮められない。
それでも諦めきれない自分は重症だなと独り言ちて菜園へと向かった。










2012.4.15 浹
2012.7.29 加筆修正





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