ヒュッ・・・コツン・・・
・・・ヒュッ・・・コツン・・・・・・
飛んでくる豆にいい加減嫌気がさして、豆が飛んでくる方へ顔を向けた。
・・・ヒュッ・・・パシッ・・・
自分目掛けて投げられた豆を、掌で受け止めた。
投げた張本人は、何も無かったかのように豆を一粒つまんで、口へと運んだ。
「貴女はいったい、何がしたいんだ」
「いえね、今日は節分だから豆まきでも、と」
呆れながら言えば、彼女は当然のごとくそう言った。
「だからって、なんで私に・・・」
「だって『鬼』だから」
名前にあるでしょ、『鬼』って、と彼女は言う。
「・・・それは、聞き飽きた」
「ん?」
そんな話は水軍館で嫌というほどに言われた。
去年もそう、一昨年もそう、その前もそう。
別に仲間に言われるのは、そんなに気にならない。
どうせ、節分の日だけだし、誰も本気じゃ無いし。
それでも、彼女に言われると、多少気分が落ち込んでしまう。
・・・もし、彼女に、
「福はー、内ー」
彼女が入口に向かって豆を投げるのを、ぼんやりと見ながら思う。
・・・もし、彼女に、『鬼は外』と言われたら。
「福はー、内ー」
それが決まり文句と分かっていても。
自分の名前に何の関係もないと解っていても。
・・・彼女の口からは聞きたくない。
「鬼もー、内ー」
「!??」
今、彼女は、なんと言った!?
「鬼もー、内ー」
「ちょっと、待った。・・・なんで、『鬼も内』?」
「・・・だって、『外』って言ったら、貴方しょげるでしょ?」
くすくす、と彼女が笑う。
「・・・それじゃあ、豆まきの意味が無いじゃないか」
「それは、大丈夫よ」
彼女が隣に寄ってきて、言葉を続ける。
「だって、本当の『鬼』が来たら、貴方が追い払ってくれるでしょ?」
だから、私の家は鬼が入っても平気なのよ、と彼女は言った。
2012.2.3 浹
2012.7.29 加筆修正
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