「頼む、!!また宿題教えてくれ!!」

そう言ってくるクラスメイトにすっかり慣れてしまった今日この頃。





夕染め教室





ホームルームが終わって、騒がしくなる教室。
部活に行く子、お喋りしてる子、家に帰る子、様々いる中で私の前には一人のクラスメイト。
そのクラスメイト、竜堂終は顔の前で両手を合わせて、拝むようなポーズをとっている。
可愛らしくやっているつもりなら、全く可愛くないと言ってあげた方がいいのだろうか?

「いいよ、別に」
「本当に!?」

特に用事も無いのでそう答えれば、物凄く嬉しそうな顔になった。
なんだか尻尾を千切れんばかりに振る大型犬を思い起こさせた。



こういうことは、実は初めてじゃない。
というか、ここ最近よくあることだったりする。
何故かはよく分からないが、竜堂は私によく宿題を聞きに来る。

〜、ここなんだけど」
「あぁ、そこはね」

机を向い合せにして、私は今日の古典のノートをまとめ、竜堂は数学の宿題に取り組む。
そして、竜堂が分からない箇所をちょくちょく聞いてくる。
聞かれたら、私は私が分かる範囲で解き方を教える。

「で、ここでこの公式を使うの」
「なるほど!!」
「・・・てか、これ授業中に先生が言ってたけど?」
「え!?俺聞いてないよ!!」

信じられない、という感じで竜堂が言う。
そりゃあ、そうだろう。

「授業中、ずっと寝てれば聞こえるはずないよ」
「あぁ、そっかあ」

それじゃあ、仕方ないな、と竜堂は一人で納得していた。

「全く、ちゃんと起きてる授業って世界史だけじゃない」
「世界史だけじゃない!!体育もちゃんと起きてるぞ!!」

・・・いや、そうじゃないだろう。

「世界史はちゃんと受けてないと、色々大変だからなぁ」

はぁ、とため息を吐きながら竜堂は言った。
その理由はクラス全員が知っている。
世界史の先生は竜堂先生で、クラスメイト竜堂終のお兄さんだ。
学校の中でも結構人気のある先生だ。
随分前に世界史の授業中に竜堂が居眠りして、竜堂先生は竜堂を教科書の角で叩いた。
それ以降、竜堂は世界史の授業だけは居眠りもふざけることもせず、模範生のように受けている。

「あの時は結構痛そうな音がしたもんね」
「実際、すっげー痛かったんだって」
「そうなんだ」
「それより、ここはどうやって解くんだ?」

そこは・・・と、また教えていく。
教えてる間、竜堂は至極真面目に聞いて、また問題を解きだす。
そんな竜堂をなんとなく見てると、視線に気付いたのか竜堂が顔を上げた。

「な、なんだよ、じっとこっち見て」
「別に?ノートまとめ終わっちゃって暇だし、なんとなく」
「・・・そ、そうか」

すっかり日が傾き、オレンジ色の光が教室を照らしている。

「・・・は、さ・・・」
「ん?」

そろそろ電気付けようかな、と考えていると竜堂が話しかけてきた。

「あっと、その・・・えと・・・」
「?」
「・・・い、いや!やっぱなんでもない!!」

結局竜堂は何も言わずに、また宿題を解きだした。

「こ、この一問解いたら宿題終わるから!!」
「そっか、がんばれ」
「・・・お、おう」

竜堂が何を言おうとしたのか、正直少し気になった。
でも、無理矢理聞こうという気は起きなかった。



夕焼け色に染められた教室を見渡しながら、ふと思う。
放課後にこうしていることが私は何気に気に入っているんだなぁ、と。










2012.1.24 浹





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