いったい彼は何処に行ったのか。

何時も居るはずの、もう住処と言ってもいい応接室に今日は何故か居なかった。
他にも行きそうな所を見てみたが、何処にも居なかった。

ケータイでも鳴らしてみようかと思ったけれど、彼が愛用するソワァーの上で無造作に置かれていたのを思い出して、やめた。

昼休みという決して長くはない休み時間。
早く見つけないと、探すだけで終わってしまう。
私は少しだけ早歩きで廊下を進んでいった。





温もりの場所





彼の行きそうな場所はあと一ヶ所。
そこは彼が行く場所としてはかなり上位になるが、まさかこの時期に行くなんて思ってもいなかった。
だけど、他に思いつく所も無かったので、ダメ元で行くことにした。

一応、ケータイを鳴らしてみたが、やっぱり出なかった。
きっとまだソワァの上に転がってるのだろう。



「やぁ、遅かったね

彼、雲雀恭弥はそこに居た。

「どうして、こんな寒いのにこんな所に居るのかな?」

聞かずにはいられなかった。
暦の上では今は冬、それも真冬だ。
それなのに何を思ったのか、彼はこの屋上に居た。
いくら晴れていて、風がないからと言っても、今日は今年の最低気温を更新している。
つまり、兎にも角にも寒いのだ。

「・・・」

彼は此方を一瞥しただけで、何も言わなかった。
どうやら特に理由はないらしい。
溜め息をひとつ吐いて、私は彼の隣に座った。


冬の穏やかな日差し、雲は緩やかに流れ、遠くに生徒の声が聞こえる。
心地よい空間が此所にはあった。
彼が昼寝をするのに選ぶ理由も分かる気がする。

・・・それでも、やはり。

「・・・寒い」

居られないほどではなかったが、直に触れる空気は冷たかった。

「随分と寒がりだね」
「違う。私はスカートなのよ?」
「だから?」
「ズボンを穿いてる君とは、感じる寒さが全くの別物なんです」

そう言ったって何とも思わないんだろうな、とか考えていると、彼がおもむろに立ち上がった。

「行くよ」

ただ一言そう言うと、そのまま扉へと歩き出した。
突然の行動にすぐ反応できなかったが、少し遅れて私も彼の後に続いた。


「ねぇ」
「何」

隣に並んで、話しかける。

「明日も今日みたいな天気なんだって」
「ふぅん」
「だから、明日は屋上でお昼を食べない?」
「寒いんじゃなかったの?」
「ちゃんと膝掛け持ってくるから大丈夫!!」

そう言って笑いかければ、彼が少し微笑んだ気がした。



あの時、確かに心地良い温もりを感じた。
もう一度、あの温もりを感じたいから。

明日は二人で、屋上へ。










2012.1.24 浹





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