私の前に色とりどりの美味しそうなスイーツ達が並んでいる。
ベリーのムースに、ショコラのタルトなど10種程のスイーツ達は、みんなどれも少し小さめの大きさ。
少し大きめの皿にセンス良く盛り付けられ、ソースで模様まで描かれているので、これが一つの作品のように思えた。

「さ、どうぞ召し上がれ」

俺の自信作たちだ、と倉石は言う。
レストランで出されるような見栄えの良さに、思わず崩してしまうのが惜しくなってしまった。
・・・実際、彼の作るスイーツはイタリアンのお店のドルチェとして出されているけれど。

「いただきます」
「おう」

迷いに迷って、まずはチーズケーキから食べ始めた。

「・・・おいしい」
「当然だろ」

それは、私好みの酸味の効いたチーズケーキだった。
甘酸っぱいムースも、サクサクのパイも、ほろ苦いカラメルのパンプディングも、全部私好みのものだった。
どれもとても美味しくて仕方がなかった。

「・・・どうした?」

半分くらい食べたところで手を止めた私に、倉石が訝しげに聞いてきた。

「・・・倉石は、コレ全部、バレンタインのお返しだって言ってたよね」
「ん?あぁ、言ったな」

今日は、バレンタインのお返しをするからと倉石に言われ、彼の部屋にお邪魔した。
彼の作ったイタリア料理がお返しとして振る舞われ、一緒に食べた。
料理のどれもが私の好きなものばかりで、どれもが本当に美味しかった。
そして、このスイーツ達も倉石の言う“お返し”の一部。

「・・・なら、釣り合ってないよ」
「は?」
「だって、このデザート、すごく美味しいし」
「まぁ、自信作だからな」
「それに、サラダとかパスタとかも美味しかったし」
「うん」
「なのに私があげたのは、ただのチョコだし・・・釣り合ってない」

先月のバレンタインに私は既製品のチョコを倉石にあげた。
百貨店で売ってた、極々普通の、ちょっとおしゃれでおいしそうなチョコだった。
こんなにも手の込んだ素敵なお返しをしてもらえる程の物ではないはずだ。

「勝手に決めんな」
「・・・」
「俺が釣り合ってると思ってるんだから、それでいいだろ」

それに・・・、と倉石は続ける。

「お前、最近ストレス溜めてただろ」
「・・・え」
「そういう時は、旨いもの食べるのが一番だ」

だろ、と倉石がニカっと笑った。

「・・・ハハ」
「なんだよ」
「自分で作ったものを、自分で美味しいって言ってるんだから、世話ないよ」
「実際旨いんだから問題ないだろ」
「うん、そうだね・・・ありがと、倉石」
「・・・ほら、他のも旨いぞ」

倉石に促されて、ミルクレープを口に含んだ。
甘い甘いカスタードクリームが広がった。





  ハッスルで行こう 倉石からお返し










2012.3.14 浹





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