「・・・あのさ、これ」
「ん?」

話し掛けてきた関本の手には、可愛らしい袋に入ったクッキーがあった。

「2月のやつのお礼」
「あ、ありがとう」

私、このクッキー知ってる。
駅ナカにある輸入食材店でホワイトデイ用にラッピングされて売られてた。
私が好きなレモン味のクッキーで、買おうか悩んでやめたやつだ。

「貰ったケーキ、旨かった」
「本当?よかった」
「手作りが出来るなんて、意外だったけどな」

ヘラリと笑って言う関本に、私も釣られて笑う。
さっきまで感じていた話し辛さが少し和らいだ。

「失礼な!!・・・と言いたい所だけど、冴原に教えてもらいながら作ったからそうも言えないね」
「なるほど。冴原直伝なら間違いないな」
「あはは、でもおいしいって言ってくれてうれしいよ」
「大助も言ってたけど、本当に旨かったよ」

おいしいって言ってもらえると、やっぱり作った甲斐があったって思えるなぁ。

「・・・それでさ、ちょっと、聞きたいんだけど」
「なに?」

関本が神妙な顔をして聞いてきた。

「俺が貰ったケーキさ、表面に模様というか、マークみたいなの付いてたよな」
「あ・・・」

確かに、付けた。
焼きあがったシフォンケーキに粉砂糖を振りかける時に、関本のだけ他のとは違うことをした。
ケーキの端の方に、小さなハートが出来るようにした。

「大助とか、他の奴に聞いても、特にそんなの無かったって言うし」
「あ、えと、その・・・それは」
「・・・間違い、とかじゃないんだよな」
「関本?」
「あれは俺が良いようにとって、いいんだよな」
「え?」

関本の言っていることがよく解らないでいると、関本は頭を掻きながら喋りはじめた。

「だから、俺が貰ったあのケーキは、間違いなく俺用に作ってくれたやつだよな?」
「う、うん」
「それで、あれは俺が都合の良いように解釈していいんだよな?」

そこで私は初めて気が付いた。
関本の顔が、茹でられたんじゃないかって位に真っ赤になっていることに。
多分、私も同じくらい赤くなってるんだ。
そうでなきゃ、こんなに顔が熱くなるわけない。





  D・N・ANGEL 関本からお返し










2012.3.14 浹





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