だいたいの想像は付いていたけれど。
かなりの量のチョコをもらう彼に、今年も諦めてしまいそうだ。

「やっぱり、無理な事だったのかなぁ」

朝から渡そう、渡そうと思っていたのに、もうすっかり放課後になってしまった。
結局、HRが終わった後にも渡せず、逃げるように委員会に出てしまった。
今日に限って委員会の仕事がなかなか終わらず、すっかり帰るのが遅くなってしまった。

「あ、アレ忘れた」

今日彼に渡そうと思って、結局渡せなかった物をうっかり教室に置いてきたのを思い出した。
下校の時刻が迫っているからか、どこの教室も誰も居なくて静かだった。

「・・・え」
「・・・」

誰も残っていないと思った自分の教室には、一人だけ残っている人がいた。

「・・・まだ、残ってたんだ、日渡くん」
「あぁ」

窓からの夕日に照らされた日渡くんは、男の子なのに綺麗という言葉が本当にピッタリだと思った。

「珍しいな」
「え?」
「いつもはこんなに遅くまで残ってなかったと思うが・・・」
「あ、えと・・・委員会がなかなか終わらなくって」

あはは、大変だったよ、と言いながらも、正直物凄く吃驚した。
確かに私はそんなに遅くまで残ることはないけれど、まさか日渡くんがそれを知っていたとは思ってもなかった。
自分の席まで行くと、机に掛けていた忘れ物に手を伸ばした。
もしかしたら、今なら、コレを受け取ってもらえたりするかもしれない。

「あの、ひ、日渡くん」
「・・・?」
「こ、これ」

諦めて逃げ出そうとする自分をどうにか押さえながら、なんとか日渡くんに用意していたお菓子を差し出した。

「これは?」
「そ、その、日渡くんが今日は色んな子から貰ってて、これ以上は迷惑なのは分かってるんだけど」
「・・・」
「もし、よかったら、その、あげたいなって」

あぁぁぁ、何言ってんだろ、私。
これじゃあ、本命ですって言ってるみたいじゃないか。

「そういえば、クラスメイトの大半に配ってたな」
「あ、うん」
「ありがとう」

私の手から日渡くんの手へと渡ったお菓子の入った手さげ袋は、可愛らしい図柄で日渡くんには少し似合わないとぼんやり思った。
受け取ってもらえたことが信じられなくて放心状態でいると、日渡くんと目が合った。

「・・・大丈夫か?」
「え、あ、う、うん!!受け取ってくれてありがと!!それじゃ、私帰るから」

今更ながら、ドキドキしてしまって逃げるように日渡くんに背を向けた。

「あぁ。また、明日」
「・・・バイバイ」

教室から出て、昇降口に着くまで何も考えられなかった。
下駄箱の前で大きく息を吐いて、そこで初めて私は自分の足が震えていることに気付いた。
去年は渡せなかったけれど、今年はちゃんと渡せたし、その上受け取ってもらえた。
達成感というか満足感みたいな感情とドキドキと煩い心臓を感じながら家路についた。





  D・N・ANGEL 日渡に渡す










2012.2.14 浹





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