改めて意識をしてしまうと、どうしてもいつも通りではいられない。
こんなことなら、大ちゃんと一緒にパパッと渡してしまえばよかった。
何であの時、梨紅と梨紗に渡す時に大ちゃんにまで一緒にあげちゃったんだろ。
「まだ渡してないんだってな」
「ぎゃ!!」
「・・・なんて変な声出してんだ」
誰の所為でそんな声が出てしまったと思ってるんだ。
いきなり後ろから話し掛けられたら、変な声の一つや二つ出ても仕方ないじゃないか。
「なんの用よ、冴原」
「なんのって・・・俺が手取り足取り付きっ切りで教えてやったのに、まだ渡せてないって聞いたからな」
「・・・」
「朝から渡す時なんて山程あったはずなのに、もうHRも終わって帰るだけ」
「それは・・・」
「このまま渡さなかったら、今月の学級新聞の記事にするからな」
「はぁ!!?」
私が渡せても、渡せなくても冴原には関係ないではないか。
・・・いや、教えてもらったんだから、全く無いとは言い切れないけれど。
そこまでされる意味が分からない。
「そんくらいしないと、オマエ絶対諦めるだろ」
「そ、そんなこと、ない」
「おーーい、冴原」
キッと冴原を睨みつけたところで、教室の入り口から声がした。
「そろそろ帰ろーぜ」
今までどこかに行っていたらしい関本が教室に入りながらそう言った。
「ん〜、そーだなぁ」
関本には背を向けている冴原の表情は見えていないだろうけれど、私はニヤリと笑うのをしっかりと見ていた。
「コイツがさ、お前に用があるんだってよ」
「・・・用?」
「ちょ、冴原!!」
じゃ、俺はちょっと便所に行ってくる、と冴原はあっという間に教室から出て行ってしまった。
残された私は一気に頭が真っ白になった。
教室にいる他の子たちの声がざわざわと頭の中に響く。
目の前には関本がいて、・・・私は一体どうしたらいいんだろう。
「・・・用って?」
「っ!?え、あ、えと」
もう、こうなったらなるようになれ!!だ。
大ちゃんや他の友達にもあげてるから、変な風には取られないだろう。
私は今日の為に用意していた紙袋を関本に突き出した。
「こ、これ・・・あげる」
絶対に顔が赤くなってる気がして、思わず俯いてしまった。
関本はどんな顔をしてるだろうか。
驚いているだろうか、・・・嫌そうな顔をしてたら、ちょっと、ショックかも。
でも、今関本の顔なんて見れない、絶対見れない。
「ありがとな」
私の手から紙袋が離れていく。
「大助や冴原が貰ったって聞いてて、俺だけ貰えないのかと思った」
正直、仲間外れは地味に傷付くからなー、なんて笑いながら言う関本はいつも通りで、少し安心した。
「手作りのだけど、ちゃんと冴原の監修の元だから、味は心配いらないはずだよ」
「持つべきは、優しい幼馴染だな」
「そ、そんなことな・・・」
思わず顔を上げたら、関本の笑った顔が見えてドキリと心臓が鳴った気がした。
「どうした?」
「な、なんでもない!!じゃ、私もう帰るから!!」
「・・・一緒に帰らないか?もうすぐ冴原も戻ってくるだろうし」
どうせ帰る方向一緒だしさ、と笑って関本は言う。
少し前の私なら、別に何も思わず普通に一緒に帰っていただろう。
「ごめん、ちょっと寄り道するから」
「そっか」
今の私は一緒に帰るなんて、耐えられそうにない。
一緒に居たいとか思ってるくせに、矛盾してるなぁ。
「それじゃ、またね」
「おう」
カバンを持って、教室の入り口に向かう。
「・・・これ、大事に食うから」
「え?」
関本が横を通り過ぎる時にぽつりと呟いた。
「また明日な」
「う、うん。バイバイ」
ドキドキと煩い心臓の音を無視しながら教室を出ると、壁に寄り掛かってニヤニヤと笑う冴原がいた。
その顔になんとなくイラっとしたので冴原を一睨みだけして、私は昇降口へと少し早足で向かった。
感謝はすごくしているけれど、絶対にお礼なんか言ってやらないんだ。
D・N・ANGEL 関本に渡す
2012.2.14 浹
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