私が迷い込んでから幾日も経って、いつの間にか季節が春から冬へと移り変わっていた。
新年が明けてから暫くして、そういえばそろそろバレンタインの時期じゃないかと思ったのが事の始まり。
ここでの生活に不慣れな私を助けてくれた人たちに何か贈ることはできないだろうかと。
とはいえ、ここは室町時代の世界。
向こうのようにチョコが簡単に手に入るとは思えないし、そもそも今まで見掛けたことがない。
結局、甘いものなら良いかなとお団子を作ってみた。
「さて、学園長先生や山田先生、土井先生、その他の先生にも渡したし、は組の良い子たちにも渡したし」
後はうまい具合に彼らを見付けられれば良いんだけど。
そうもうまくいかないのが現状、といったところか。
この学園はだだっ広い上に、みんな授業の後は各々鍛錬だったり委員会だったりで散らばるし。
下手したら、学園から出て山ひとつ越えるどころか、ふたつみっつ超えた先で鍛錬してたりするし。
そんな遠くまで行かれちゃったら私にはどうすることも出来ない。
「なんかいい匂いがする」
「うひゃぁ」
突然、後ろから声を掛けられて、随分と変な声が出てしまった。
ドキドキと煩い胸を押さえて振り向くと、声の主の七松小平太と何も言わずに静観する中在家長次がいた。
これは、・・・幸先の良いスタートかもしれない。
「なんか食べ物持ってる?」
「ちょうどよかった。二人に渡そうと思ってて」
「何を?」
「私の住んでいた所の風習?みたいので、この時期に好きな人とか友達にお菓子をあげるの」
「へー、初めて聞く風習だ。な、長次」
「あぁ」
そりゃそうだろう、と心の中で返しつつ、笹の葉で包んだお団子を二人に渡した。
「はい、小平太に」
「っ!?」
「ありがとう!!」
「どういたしまして。はい、中在家君にも」
「・・・」
中在家君はじーっとお団子を見たまま、受け取ろうとしない。
彼は甘いものが嫌いではなかったはずだ、むしろ好きな方だったはずだが。
「・・・もしかして、毒入りとか疑ってる?」
くのタマのみんなは授業とかで毒入りのお菓子を作るから、それを疑って警戒してるのかも。
そんなの入ってないから安心してー、と言えば、ふるふると首を横に振って受け取ってくれた。
「ところでさ、ほかの六年生や五年生って見掛けなかった?」
「確か、文次郎と留三郎は委員会がって言ってたな」
「・・・不破と鉢屋は少し前に図書室で見掛けた」
「あと、伊作は多分医務室にいると思うぞ」
「そっか、ありがと。探してみるよ」
じゃねー、と言って二人と別れ、とりあえず図書室に行って、用具倉庫、会計委員の部屋、医務室の順に探して見ることにした。
なんの確証なんてないけれど、なんとなくみんなに渡せそうな気がした。
落第忍者乱太郎 小平太と長次に渡す
2012.2.14 浹
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