別に甘くみていたわけじゃない。

「だぁーーー!!!そうじゃねぇって!!」

普段料理をしていない私が、そんな簡単に出来るとも思ってはいなかった。

「だから!!なんでそう、オマエは雑なんだよ!!」

・・・お菓子作りって、こんなに難しいものだったっけ!??


間近に迫ったあの日の為に、私は冴原の家でお菓子作りを教えてもらっている。
幼馴染の冴原が料理上手なのは前から知っていて、冗談半分で教えてくれないかと頼んでみた。
すると、テスト用のノートで手を打ってやる、と言って承諾してくれた。
あまりにすんなりと引き受けてくれたので、正直驚いた。
どの位驚いたかと言えば、大ちゃんを捕まえて何か裏があるんじゃないのかと問い質した位だ。
その時の大ちゃんは、単にテストがギリギリだからだよ、と苦笑しながら言っていた。
・・・というか。
料理上手でお菓子も作れるって、なんて立派な主夫になったんだ。

「おい、手が止まってんぞ」

全然関係ない事ばっかり考えていた所為かすっかり作業が止まっていて、横から小突かれてしまった。

「ったく、何を妄想してたのかは知らねぇけど」
「も、妄想なんて、してない!!」
「どうせ、アイツにそれを渡す時のことでもソーゾーしてたんだろ」

ニヤリ、と音が付きそうな感じで冴原が笑いながら言った。

「べつに!そんなこと想像してな・・・・・・え?」

してない、と言おうとしたところで、何かが引っ掛かった。
私は手作りのお菓子を作る理由を冴原に言った覚えがない。

「気付いてないとでも思ったか?」
「な、なにを・・・」
「何年オマエの幼馴染やってんだと思ってるんだ」

しかも俺はジャーナリストだからな、と得意気に胸を張ってしゃべりだした。

「去年も一昨年も、友達にファミリーパックのチョコを渡しておしまい、だった奴が」
「・・・うぅ」
「今年に限って手作りなんて、本命に渡す以外考えられん!!」

さぁ、さっさと吐いて楽になれよ、と詰め寄ってきた冴原の手にはいつの間にか録音機器があった。

「誰が言うか!!大体、仮にそうだったとしても、その本命とやらまでは分からないんでしょ?」

どうせハッタリで《アイツ》なんて使ったに違いない。
はぁぁぁ、と深いため息が聞こえて横を向くと、もの言いたげな目でこちらを見る冴原がいた。

「だから、何年オマエの幼馴染やってんだと思ってるんだよ」

アイツなんだろ、と言って、大当たり大正解の人物の名前を言い当てた。

「な、なんで、それを・・・」
「見てたらだいたい解るだろ」
「う、うそでしょ」
「まぁ、当の本人や大助たちは気付いてないみたいだったけどな」
「・・・」
「ジャーナリストたる者、どんな些細なスクープも見逃せないからなぁ」

冴原に気付かれたのは想定外だったけれど、本人に気付かれてないのならまだ大丈夫だろうか。

「安心しろって。今更言いふらしたりなんてしないからよ」
「・・・いま、さら?」
「幼馴染がずっと前から想ってる初恋の相手だもんな!!」

これでも応援してんだぜー、なんて言う冴原の声が右から左へと流れていく。
・・・いったい、どんだけ前から気付かれていたんだ。
なんだかもう、今直ぐ帰りたくなって作業の手を進めることに専念した。


「また昔みたいに呼んで渡してやったら、喜ぶぞー」
「あぁ、もう、黙れ!!」





  D・N・ANGEL 冴原とバレンタインの準備










2012.2.14 浹





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