「ねぇ、それって誰にあげるの?」

本命でしょ?と可愛らしく首を傾げた梨紗が聞いてきた。

「え?本命いたの!?だれだれ?」

興味津々、といった様子で梨紅もお菓子作りの手を止めて聞いてきた。

「べ、別に、・・・本命、とかじゃ、なくって・・・」
「・・・嘘を言ってもダメよ」
「梨紗?」

随分と自信満々に私の言ったことを“嘘”と言う梨紗に梨紅は怪訝そうな顔をした。
梨紗はふふん、と軽く笑うと、ビシッ、と効果音が聴こえる勢いで先にラッピングが終わったトリュフを指差した。

「あれは可愛いビニールの袋に入れて口をモールでとめただけ。しかも形も少し不揃い」

おそらく友チョコ、義理チョコ用ね、と言いながら、今度は私の手元にあるトリュフを指差した。

「比べてこっちは、形が綺麗なものばかり選んでるし、ラッピングも箱に包装紙にリボンまで用意してある」

既製品みたいに綺麗に出来てるよねー、と梨紅が褒めてくれた。

「これで本命じゃなかったら、何チョコになるのかしら?」

さあ答えなさい、と梨紗が詰め寄ってきた。
正直、ちょっと怖い。折角の可愛い顔が台無しだよ。

「・・・とにかく、私のことはいいから!!」
「あ、逃げるの?」
「2人とも、もうすぐ完成なんだから!!梨紗は怪盗ダークにそのブラウニーを渡すんでしょ?」
「そうよ!!ダークさんに受け取ってもらって、食べてもらって、それでおいしいって言ってもらって・・・」

受け取ってもらった後のことを考え出した梨紗は、何を想像したのか突然、キャーー、と叫んで顔を赤らめた。
梨紅は見慣れてるのか呆れながらも、どこか不機嫌そうな顔をしていた。

「ほら、梨紅もそんな顔してないで」
「・・・だって、ダークは犯罪者で、変態で・・・」
「それ、丹羽君にあげるんでしょ?」
「・・・うん」

梨紅が作ったガトーショコラを指差して言えば、頬を染めて小さく頷いた。
私は、梨紅のこういうかわいい所がとっても好きだ。

「大好きな彼氏にあげるのに、そんな顔で作ってたらダメだよ」
「そ、そうだよね!!」

漸く2人が休めていた手を動かしだした。
なんとか2人の思考を逸らすことが出来たようだ。
私も止めていた作業を再開した。

トリュフを綺麗に箱に入れる。包装紙でくるんでリボンを飾る。
去年は最後の最後で怖気づいて、渡せなかった。
でも今年は絶対に渡したい。
今年渡せなかったら、もう渡せない気がなんとなくしたから。
ねぇ、と梨紅が声を掛けてきた。

「ちゃんと、渡せるといいね」

そうだね、梨紅も頑張ってね、と返して、リボンを結んで完成させた。





  D・N・ANGEL 梨紅と梨紗とバレンタインの準備










2012.2.14 浹





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